VOL.64 おいしい、おいしいの時間
うめちゃん、ももちゃんのための手作り食をはじめて8ヶ月になる。
きっかけは、一連のペットフード事件。
私にとって問題だったのは、当時、うめちゃん、
ももちゃんにあげていたメーカーのウェットフードが、店頭から姿を消してしまったこと。
「品質に問題はない」としながらも自主回収してしまったと記憶している。
買い置きもなくなり、さてさて、どうしたものかと悩んだ。
ふたりにウェットフードをあげていたのには、少しでも水分を摂ってほしいという想いもあったから。
毎日、夕方になると、一緒に遊んだ後に「楽しかったね。
おいしい、おいしいしようか」と言ってウェットフードをあげるのがそれまでの習慣。
ふたりは、そのウェットフードを、とてもおいしそうに食べていたものだ。
食べることが大好きな私にとって、彼らの食の楽しみを奪うのは、何とも忍びないこと。
考えた結果はじめたのが手作り食。
インターネットを調べ、本を読み、いろいろな勉強をしながら、
試行錯誤の手作り食のはじまりだった。
彼らにとって、おいしいものでなければならない。
水分を摂ってもらうことも目的だ。
一生懸命作ったのに、クンクンとするだけでなかなか食べてくれないこともあった。
猫さんは食に気難しいということを実感する日々。
もう、手作り食はやめようと、何度思ったかわからない。
しかし反面、それまで好んで食べようとしなかった食材にも
慣れてくれているという手応えを感じる日々でもあった。
ある日、肩の力が抜けた。
併用してドライフードをあげていたので
「好きなほうを食べてくれれば、それでいいんだ」そう思えたのだ。
不思議なことに、私が、気持ちの上でそんなふうに割り切れたちょうどその頃から、
うめちゃんも、ももちゃんも手作り食を好んで食べてくれるようになる。
彼らの食の好みもだいぶ把握し、
こちらが食べてほしいと思う食材をこっそり取り入れ、力まず、
力を抜いた手作り食を続けていたある日「あれれ?」と気が付いたことがある。
涙鼻管が細いため詰まりやすいと言われ、
常に茶色の涙やけを起こしていたももちゃんの涙やけがなくなり、
本来の真っ白な毛を取り戻していた。
うん?そういえば。
幼い頃の鼻気管炎のため、しょっちゅう左目を腫らし、
涙を流していたうめちゃんの、その症状は、このところずっと現れなくなっている。
そして、これは言葉では説明のしようもないのだけれど、
臆病で神経質だったうめちゃんが、大らかになった。
カチカチだったうめちゃんのうんちは、ほどよい、
いいうんちになり、形のないほどゆるかったももちゃんのうんちは、形のあるうんちになっている。
偶然と言えば、偶然。
でも、そうではないかもしれない。いろいろな発見がとても楽しい。
今では、うめちゃんも、ももちゃんも、私が作る手作り食が大好き。
うめちゃんは私の足もとで、ももちゃんは私の後ろにある棚の上で、
「早く作っておくれ」と言いながら、ごはんができるのを待っていてくれる。
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