VOL.63 お気に入り場所の不思議
寒いこの季節になると、うめちゃんが好んで過ごす棚。
ちょうど横からくるガスストーブの温風が棚の中をうずまいて、
その棚の中にいるうめちゃんを暖かく包んでくれる場所だ。
さすが猫さん。素敵な場所を見つけるのが上手。
棚の壁をまくらにして、優雅に香箱をつくり、
のんびり、おだやかな表情で眠るうめちゃん。
私は棚の中でのびやかに過ごすうめちゃんを見るのが大好き。
そこで過ごすうめちゃんのところへ行き、
うめちゃんを困らせるのが好きなのはももちゃん。
気持ちよく眠っているうめちゃんにちょっかいを出し、
最終的にはうめちゃんを追い出して、自分がそこにちょこんと鎮座している。
うめちゃんの、困ったような戸惑った顔と、
あまりにも無邪気なももちゃんの表情がおかしい。
思わず笑わずにはいられない光景のひとつだ。
棚は上下2段になっていて、その両方にクッションを敷いている。
うめちゃんは、その時々の気分で、上で過ごしたり、下で過ごしたり…。
棚を整理して、ふたつの場所を作ったのは、うめちゃんとももちゃんが、
それぞれにそこで過ごしてくれればいいという想いから。
うめちゃんとももちゃんが、上と下を上手に分け合って時間を
過ごしてくれればいいと思うのだが、そんな私の仲裁も何のその。
ももちゃんはまるで決まり事のように、
うめちゃんにちょっかいを出しに行っては困らせている毎日。
ふと思う。ももちゃんは、うめちゃんを困らせたり、
邪魔したり、追い出したりしたいわけではなく、
うめちゃんがいる、その場所に行きたいのだと。
そうか、そうか。そうだよね。甘えん坊のももちゃんだもの。
そう考えると納得もできるというものだ。
だって、この棚に限らず、
同じものを2つ準備してあるベッドでうめちゃんが眠っている時にも、
ももちゃんのちょっかい攻撃が見られるもの。
「うめちゃん、ももちゃんはね、うめちゃんと一緒にいたいんだって
」…思わずそんな言葉が口をついて出る。
ももちゃんの気持ちを思い、ちょっとした切なさがこみあげる瞬間。
ももちゃんが唯一、決して、うめちゃんにちょっかいを出しに行かない場所がある。
ももちゃんがそこで過ごすこともない。
私の隣に置いてある椅子の上だ。
ふたりの間で、ここはうめちゃんだけのもの、
という取り決めができているのかもしれない。
お気に入りの場所の不思議。
これは私にはわからない、うめちゃん、ももちゃん、ふたりだけの世界。
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