VOL.57 お留守番
「ただいま」と玄関を開けた時、それまでどこにいたとしても、
よっこらしょと起き出して、迎えに来てくれるももちゃん。
今の今まで寝ていましたという眠そうな、寝ぼけ顔が何ともいじらしく感じられる。
「ももちゃん、お迎えに来てくれたのね。ありがとう。
いい子でお留守番していてくれたね、ありがとう」とお礼を言う。心をこめて。
ももちゃんは、手をぐんと前に伸ばして頭を低くし、
お尻をつんと突き出すようにしてノビをする。私は、そのノビが終わるのを待って、頭や背中を、いい子、いい子。
ありがとう、ももちゃん。
ももちゃんよりも先に玄関に飛び出して来てくれることもあるけれど、
大抵、その頃になって、ようやく姿を見せてくれるのが、うめちゃん。
うめちゃんも、ももちゃんと同じように大きくノビをしながら現れる。「お、帰ってきたか」という感じ。
「 うめちゃん、ただいま。お留守番ありがとね」
うめちゃんにも、お留守番していてくれたお礼を忘れずに。
人間側の都合のようで、はなはだ申し訳ないことだけれど、
ももちゃんが来てくれたおかげで、外出することが、気分的にとても楽になった。
うめちゃんひとりを残して外出するのは何とも気が重く、
後ろ髪をひかれる想いだったことを思い出す。
特に、帰りが遅くなることがわかっている時はなおさら。
一人でのお留守番を、うめちゃんは案外楽しんでいるかもしれないと思いつつ、
どこかで「さみしくないかしら」などと、案じている私がいた。
うめちゃんが、まだひとりの頃、雪のために高速道路が閉鎖され、
帰りの時間が予定より何時間も遅れたことがあった。
高速道路を締め出された車がすべて一般道に流れたため、
遅々として進まぬ渋滞の中、一人待っていてくれるうめちゃんに
「うめちゃん、少し遅くなるよ、心配しないでね」と何度、心の中で語りかけたかわからない。
ようやく帰りついたのは深夜に近い頃。
「うめちゃん、遅くなってごめんね」と懸命に言う私に対するうめちゃんの
態度は妙によそよそしく、明らかにふてくされていることがわかった。
それ以来、出かける前には「今日は帰りが遅くなるからね、心配しないで待っていてね。
ちゃんと帰ってくるからね」と伝えてから外出することにしている。
今は、「今頃おふたりさんは何をしてるかな」「眠っている時間かな」
「運動会をはじめてるかもしれない」なんて考えると、外出先でも思わず笑えてきて、楽しい。
きっと、ふたりでうまくやっていてくれるだろうという、
これは、うめちゃんとももちゃんへの信頼、といったところ。
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