VOL.56 うめちゃんの抱っこ
おそらく生後2ヶ月を迎える頃、マンションのドアの前にやって来て
「助けて、助けて」と声をふりしぼり、弱りきった体で懸命にないていた子猫、うめちゃん。
迎え入れた数日後から、うめちゃんは、
私が仕事をする椅子のそばにお行儀良くすわり「ひざの上にのせて」と言うようになった。
一日のうちに何度か、私のひざの上に来てくれるのは、今も当時と変わらない習慣。
違いがあるとすれば、幼い頃は私の足元に来て「ミョン」となき、
私が抱き上げるのを待っていていてくれたのが、今では、
自分のタイミングでピョンとひざの上に来てくれるようになったこと。
うめちゃんは、私のひざの上に飛びのると、
まずは私と向かい合うように横ずわりになり、私の顔をじっと見つめる。
「来たよ」「撫でて」…そんな表情。
私は両手でうめちゃんの顔をはさみこむようにして、
口の横を親指でスリスリと撫でてあげる。
続いて首のうしろ、
耳のうしろなど、うめちゃんが気持ちがいいというところは、くまなく撫で撫で。
撫でられることに満足すると、うめちゃんは器用にまるくなり、
私のひざの上でのお昼寝タイムをスタートさせる。
ある時、うめちゃんが私のひざの上で眠る様子を見た人が言った。
「うめちゃんが、あなたを抱っこしているみたい」。
言われてみると確かにそうなのだ。
うめちゃんは、私のひざの上にいる間、自分の手を私の腕にしっかりとのせて過ごしている。
なるほど、そうか。うめちゃんは、私を抱っこしてくれているんだ。
これはもう疑う余地もなく、うめちゃんから私への愛情の表現なのだ!と、私は信じている。
「大丈夫、大丈夫。ぼくが一緒にいるよ」。
きっとそんな、うめちゃんからのメッセージ。
何てありがたくて、何て嬉しいことだろうと思う。
うめちゃんの大きさとやさしさに、改めて感謝だ。
ありがとう、うめちゃん。
きっとあなたは、そうやって私を支えてくれているのね。
本当にありがとう。
ひざの上のうめちゃんを撫でる私の手に、愛情がいっぱいあふれていますようにと願う。
さてさて、ももちゃんはと言えば、
私のひざの上に来てくれるのは机の上に何やら興味をそそられるものがある時や、
らくをして棚の上まで行きたい時。
そう、つまり、ももちゃんにとって、私のひざは単なる踏み台なのだ。
しかし、これもまたしあわせなこと。
ももちゃんが私のひざの上をさっさと通り過ぎてしまうたび、
その奔放さがおかしくて、ついつい笑ってしまう。
とは言え、ももちゃんが私のひざの上でまるくなって過ごしてくれる日がくることを夢見ないわけではない。
「ねぇ、ももちゃん。たまにはここにいたら?」私は今日も繰り返す。
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