VOL.54 私とうめちゃんとももちゃんの冬の朝




相棒猫日記
朝方、つめで髪の毛を梳いてくれる。
ひんやりした肉球でほっぺをさわってくれる。
うめちゃんの「ちょっと起きて」のサインだ。

私は、半分眠りの世界をさまよいながら目を開け「あら、うめちゃん、おはよう」と言う。
その後は片手で布団を持ち上げ、うめちゃんが布団の中に入りやすいようにするのが習わし。

うめちゃんはするっと布団に入り込み、私の隣で眠りの姿勢を整える。
それは私の枕に頭を載せる体勢であったり、私のお腹のあたりに自分の背中を押し付ける体勢であったり、 その日のうめちゃんの気分次第。
私は、そのうめちゃんを後ろから抱っこする。
うめちゃんは、ぽわんとあたたかくて、ふんわりやわらかで。
そうして目を閉じているだけで、やさしい、しあわせな気分になれる。
それが嬉しくて、私は心をこめて、うめちゃんに言う。
「うめちゃん、来てくれて、ありがとう」。

お母さんとも兄弟姉妹ともはぐれ、小さな体で懸命に命をつないでいたうめちゃんが、 私のところへ来てくれた、そのことへの感謝がこみあげる瞬間でもある。

「ありがとね、うめちゃん」。
半分眠った頭でうめちゃんを撫でながら、話しかけていると、 すぐにゴロゴロとうめちゃんの返事が聞こえてくる。
ゴロゴロにこたえようと、さらに撫でる手に力をこめると…、 私の意に反し、うめちゃんは布団から出て行ってしまうのが常。
「あーん、もう、うめちゃんたら。行っちゃうの?」
何ごとも「ほどほど」が肝心ということか。






相棒猫日記
同じように、夜中、朝方問わず、冷たい鼻を私の顔に近づけ、 くんくん、くんくんしてくれるのはももちゃん。
こちらは「いい子、いい子して」の合図。

私は、ももちゃんの顔や首まわりや背中を、 「この愛が伝わりますように」と願いながらゆっくりゆっくり撫で続ける。
ももちゃんが「もういいよ」と言うまで。

時々ももちゃんが私の顔の横に立ち、布団に入り込みたい気配を漂わせることがある。

「やったね、おいで、おいで」と心の中、思う私。
まずはそっと布団を持ち上げてみる。
「はい、ももちゃん、どうぞ。あったかいよ、一緒に眠ろう」今度は声に出して誘う。
ももちゃんが、一歩、また一歩と歩を進め、鼻の先を布団の中へ。
「そうそう、そのまま中へどうぞ、どうぞ」と、これは心の中で。
しかし、ここから時間がかかるのが、ももちゃんなのだ。
一生懸命に、もういいでしょ、というくらいにくんくんを繰り返し、 やっと布団の中へ入り込む。
奥へ、奥へ。
「やったね」とこれまた心の中でガッツポーズをし、そっと布団をおろした瞬間、 ももちゃんはするりと布団から出て行ってしまう。

う~ん、残念。あまり欲を出しすぎてはいけないという戒めだろうと、私は毎日、思っている。
そして、この朝のやりとりが朝寝坊の正当な理由として通用するはずもないよな、とも。






■前の「相棒猫日記」へ

■次の「相棒猫日記」へ

■「相棒猫日記」の目次へ