VOL.52 うめちゃん、ももちゃんのおもちゃ
まだ、うめちゃんが私のところへ来てくれて間もない頃、
「本物のうさぎの毛を利用しています」と書き添えてあるねずみちゃんの形をしたおもちゃを買ったことがある。
長いひもの片方に握り棒が付いていて、
もう片方の先に、うさぎの本物の毛皮をまとったねずみちゃんがついているというおもちゃだ。
そのねずみちゃんをゆらゆら揺らしたり、うめちゃんの目の前に置いて、
さっと引いたりすると、うめちゃんは大喜びで、ねずみちゃんに飛びかかり、
時には口にくわえたままケリケリをしたり、抱えてガジガジとかじったりしていた。
ある日、その姿を見て、ふと思った。
いかにうめちゃんの大好きなおもちゃとは言え、
そこに犠牲になったうさぎさんがいるのはいかがなものかと。
もちろん、どのような過程を経て、
そのうさぎさんがおもちゃになってしまったのかはわからない。
でも、その事実に何ともやり切れない気持ちになってしまい、
それ以来「本物の毛」などをうたい文句にしているおもちゃは買わなくなった。
今、うめちゃんとももちゃんのおもちゃとして活躍してくれているのは、
フリースのような素材でできているオレンジ色のポンポンと毛布のような素材でできた
、動くたびにピヨピヨとなくねずみちゃん、またたびの木の皮が貼ってある、
倒しても倒しても起きあがるだるまさんのようなおもちゃなど。
これらを日によって使い分け、彼らが飽きないように遊んでいる。
中でも、うめちゃん、ももちゃんの最近のお気に入りは「手づくり毛ボール」。
実はこれ、うめちゃんとももちゃんの毛で作ったボールなのだ。
ふたりをブラッシングするたびに取れる毛を専用のびんに入れてためておいて作る。
仕上がりの軽さといい、はずみ具合といい、私から見ても、とても素敵なおもちゃ。
うめちゃんも、ももちゃんもこの毛ボールが大好き。喜んで転がしては追いかけ、
捕まえては転がして遊んでくれている。
この毛ボールを作るのもまた楽しい。少しずつ毛を足して、
手の平でくるくるとまるめていくだけなのだが、私が手をくるくるし始めると、
きまってふたりがやって来て、興味津々の顔、キラキラした目で私の手元を見つめている。
「おふたりちゃんのおもちゃを作ってあげるからね。ちょっと待ってて」
などとおしゃべりしながら進める作業がいいのだ。
好奇心旺盛なももちゃんは、毛の入ったびんの中をクンクンしてみたり、
クイッと手を入れてみたりと、何ともかわいらしい。
自分で作る毛ボールは大きさも調整できるし、毛のまざり具合で、
ひとつとして同じ色合いのものがない、というのも、私にとっては魅力。
うめちゃん、ももちゃん、そして私の合作と言ってもいい、このおもちゃ。
手づくり毛ボールで楽しく遊んでくれるふたりの姿は、何よりも素敵な、私へのプレゼントだ。
■前の「相棒猫日記」へ
■次の「相棒猫日記」へ
■「相棒猫日記」の目次へ