VOL.38 うめちゃんのトラウマ?/2004年8月(出会いから293日)
私がうめちゃんと出会ったのは、うめちゃんが、おそらく生後2ヶ月の頃。
お母さん猫のことはもちろん、うめちゃんがどんな環境で生まれ、何故一人ぼっちになってしまったのかを知ることはできない。
わかっているのは、私に会うまでの期間を、自分ひとりの力で生き抜いてきたということだけ。
私のところへ来てからずっと、うめちゃんは部屋の中での暮らし。
窓の外を見つめるうめちゃんのはかなげな後姿を見るたび、外の世界が恋しいのではないか、外で思い切り遊びたいのではないかと、とても気になっていた。
実家で暮らす猫、パチャは長いリードをつけて庭で遊ぶのが日課。
うめちゃんを連れて実家に帰った時にも、庭石に乗り、遠くを眺めては気持ち良さそうに外の風に吹かれている。
「そうか、うめちゃんも外に出てみる?」
どうして今まで気がつかなかったのかと、そのひらめきにウキウキした。
さっそくうめちゃんにもリードをつけ、パチャの隣に連れて行く。
「はいどうぞ。お外の空気、楽しんでくださいな」
きっと喜んでくれるだろうと思っていた。
しかし、うめちゃんは、怯えたように慌てて玄関に入りこみ、そのままうずくまってしまった。
そこから動こうとしない。
「うめちゃん?」うめちゃんの顔をのぞきこむ。
その顔を見てわかった。
うめちゃんは外が怖いのだ。
ひとりぼっちで暮らしていた、外が怖いのだ。
あたたかいベッドもない外の世界で、必死に自分の身を守って生きてきたうめちゃん。
眠る時も、身体を横たえることをせず、座ったまま、身体をカクンカクンと動かしていた、出会ってすぐの頃のことを思い出す。
うめちゃんに、その当時の記憶があるのかどうかはわからないが、とにかく、外の何かが、うめちゃんを怯えさせていた。
ごめん、ごめんね、ごめん、ほんとにごめん。と怖い思いをさせてしまったことを謝りながら、うめちゃんを抱き上げる。
切ない思いがどっと胸にあふれた。
「大丈夫。もう一人で頑張らなくてもいいんだよ。安心していいんだよ」声に出したら泣けてきそうで、私は必死に、胸の中でうめちゃんに語りかけた。
時々ガサガサと音をたてて寝返りをうっている。そんな小さなことが私のしあわせ。
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