VOL.35 天袋猫、うめちゃん/2004年5月17日・月曜日(出会いから203日)
うめちゃんが私のところへ来てから、毎日一緒に出勤し、半年以上もの間を過ごした事務所を離れ、新しい事務所へ移転することが決まった。
新しい事務所に慣れてくれるだろうかという、大きな不安を抱えながら引っ越しの日を迎え、いよいようめちゃんの初出勤の日がきた。
うめちゃんの 様子を見て、新しい事務所になじめないようなら、今後は家でお留守番猫になってもらったほうが良いだろうとも考えている。
新しい事務所の扉を開ける。
「うめちゃん、今日から、ここでお仕事だよ」。
うめちゃんの好きなクッションを敷いた私の椅子に、そっと座らせる。
ほんの少しじっとしていたけれど、それもつかの間、あっという間に椅子を飛び降り、部屋の隅に行き、うずくまってしまった。
「うめちゃん、大丈夫だよ」と声をかけ、抱き上げようとするが、うめちゃんはソロソロと隣の部屋へ行き、自分の居場所を探しているようだ。
うめちゃんが顔をあげる。
目線の先は、普段あまり使わない書類を入れた天袋だ。
壁に積みあげてあった段ボールに飛び乗ったかと思うと、ほんの一瞬の間に、うめちゃんは天袋の中の猫になった。
私の手が届くはずもなく、降りておいでと手を伸ばしても、降りてくるはずもない。
うめちゃんは、天袋のさらに奥へと入って行く。
私は、しばらくの間その場を動くことができず、ただただどうしようかと悩んでみたが、結局はどうしようもないとあきらめることにした。
時々様子を見に来よう。
今日一日は、うめちゃんが選んだ場所に居てもらうのが良いかもしれない。
とは、思っても、やはり落ち着かない気分での仕事だ。
ドン!段ボールに飛び降りたうめちゃんの音だ。
急いで隣の部屋へ行ってみる。
うめちゃんが私に近づいて来る。とても久しぶりに会った気分だ。
どうやら、うめちゃんは事務所全体の探検を始める気になったようす。
ゆっくり、ゆっくり歩いていく。
無理をせず、せかさず、うめちゃんのペースで新しい場所に慣れてもらおうと、しばらくそっとしておく。
様子は横目で見ながら。
どの位の時間がたっただろう。
うめちゃんがいつものように、私の膝の上にやって来た。
そしていつものように私の顔を見つめ、コロンとお腹を見せる。
良かった。これなら、何とか、この場所にも慣れてくれそうだ。ほんの少し、ホッとした瞬間。
うめちゃん、どう?明日も出勤できそう?
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