VOL.4 うめちゃんのお薬/2003年10月30日・木曜日(出会いから4日)
慣れというのは恐ろしいものである。
いや、この場合、有り難いと言ったほうが良いのだろう。
誰もが、私が猫を抱いて出勤することを当たり前だと思いはじめている。
里親が見つかるまでと好意にあまえさせてもらうことにした。
1日に4回の点眼は忘れずしっかり。
朝起きてすぐと昼頃、夕方5時頃、眠る前、というのがだいたいの目安だ。
1日に2回、朝と夕方にはシロップ状の飲み薬もあげる。
針のついていない注射器で薬を吸い上げ、それを口の中へ流しこむのだが、これがなかなか大変だ。
注射器を口に持って行き「猫ちゃん、お薬だよ。頑張って飲もうね」と言いながら、注射器の先でつんつんとして、口を開いてもらい、そのまま中の薬を押し出す。
薬を流しこむスピードが難しい。
早いと、猫が飲みこめずにこぼしてしまうし、遅いと注射器を口から出そうとして暴れてしまう。
早く良くなってほしい、薬を1滴もこぼすまいと思うと、毎回が真剣勝負になる。
そんな私の想いにこたえてくれるかのように、猫も目に見えて元気になっていく。
ジャンプして段ボールを飛び出そうとするまでになった。
少しだけれど目も開き、目の下の膿の固まりもとれて、表情もかわいらしくなってきた。
夜、相変わらずお座りして体を左右に揺らしながら眠る姿を悲しい気持ちで眺め、「もう大丈夫だよ、安心して眠っていいんだよ」と話しかける。
短く「ミョン」とないて、猫は体を丸くして眠りについた。
私にはその声が「うん、わかった」とでも言っているように聞こえた。
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